2023年11月22日水曜日

209回金曜会のお知らせ

いよいよホリデーシーズンですがいかがお過ごしでしょうか。

今回の演者はジョンズホプキンス大学医学部統合失調症センターの石塚公子先生とYukiko Y. Lema先生です。


同センターでは臨床で出くわす疑問をサイエンスするということを基本姿勢に、統合失調症の病態解明に取り組んでおられます。今回の講演では、臨床現場や患者会といった現場の状況をいかに管理しつつ研究に必要なサンプルやデータを収集するのかというところに始まり、そうして得たものをもとに解析を行って統合失調症を病型ではなくBiologicalに分類しようという試みやアルツハイマー型認知症のバイオマーカー同定の試みまで、未発表のCutting edgeなデータを含めて、お二人の先生にご講演いただきます。

精神疾患に興味をお持ちの方にとってのみならず、臨床と基礎の橋渡しの形についても実際的なお話をうかがえる大変貴重な機会です。In person限定の開催ですので是非会場まで足をお運びください!


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209 NIH金曜会 

講演会
 2023121日午後6時よりIn person限定
 @Building 37 4階カンファレンスルーム (Room #4041/4107)

演者
 石塚公子先生&Yukiko Y. Lema先生
 (ジョンズホプキンス大学医学部 統合失調症センター)

演題
 Deciphering novel mechanisms and biomarkers for
 neuropsychiatric disorders: multimodal studies with
 multiple tissue biopsies in a cross-disease,
 dimensional approach


懇親会
 午後8時ごろより 
 @Guapo's Restaurant (8130 Wisconsin Ave)
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(要旨)
統合失調症、双極性障害(双極性症)、その関連疾患はsevere mental illnessとして精神疾患の中でも特に医学的、科学的対象となるものだが、それらの有病率は総計で人口の5%を占めるコモンなものである。青年期に発症し長い経過をたどるものが多いため、その社会的負担は非常に大きい。発症メカニズムをターゲットとした薬剤は未だに開発されておらず、アンメットニーズの高い分野である。精神科遺伝学の分野では、新しいシークエンスのテクノロジーを使って全ゲノム的にリスク遺伝子を報告するが、それらは学術雑誌においては百科事典的な意味合いを持って出版されるも、これらは臨床診断名で分類した患者群を用いたものである。Severe mental illnessにおいては同一の診断名にあっても多面的で個人差が大きい病態の集まりであることから、これらの情報は必ずしも病理機構解明、薬剤の開発に直接的な恩恵をもたらしたとは言い難い。我々のセンターは診断名を超えて共通に介在する病態で疾患群を整理し、生検サンプルの活用を通して、病理機構解明と薬剤の開発を試みている。本プレゼテーションでは、このような橋渡し研究のベースとなる患者コホートを成功させるための基本的姿勢と実際的なストラテジー、生検サンプル、臨床データの収集についてまずお話しする。生検サンプルの中でもolfactory neuronal epitheliumの活用について発表する。この活用を通して進んでいる、統合失調症の病態生理解明のプロジェクトと、アルツハイマー病のバイオマーカープロジェクトについては、未発表のデータをご紹介する。




2023年11月2日木曜日

第208回金曜会のお知らせ

208回金曜会のお知らせです。通常と開催曜日が異なるのでご注意ください。1113日月曜日18よりインパーソンでの開催です。

 

208回の演者は千葉県がんセンター研究所・進化腫瘍学研究室の末永雄介先生です。末永先生はOpen reading frame dominance (ORFドミナンス)という概念を考案され、この指標が生物進化における遺伝子誕生の過程で上昇することを発見されました。またORFドミナンスの観点からがんの進化についての研究をお話しいただく予定です。今回インドネシア、テキサスで講演された後、NIHまで足を伸ばしていただけることになりました。

 

生物の進化や遺伝子誕生、がんの進化について思いを馳せるきっかけにぜひ足をお運びください!

 

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208 NIH金曜会

 

講演会:20231113(月)午後6時(EDT)よりin person形式
 

    場所: Building 37 4階カンファレンスルーム (Room #4041/4107)
   
演者:末永雄介先生(千葉県がんセンター)
   
演題:がん進化におけるORFドミナンスの変動と遺伝子誕生

懇親会:午後8時ごろより 
Bacchus of Lebanon (7945 Norfolk Ave)

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(講演要旨)

がんはその発症と進展において正常細胞には存在しないRNA isoformを多数発現する。しかし、こうしたトランスクリプトームの変化がどのようにプロテオームに影響を与え、がんの発症及び進展に寄与するかは不明な点が多い。我々はRNAの翻訳効率と相関する簡便な指標を探索する過程で、Open reading frame dominanceORFドミナンス)という概念を最近考案して報告した。この指標はnoncoding RNAを含む任意の遺伝子のRNA配列から一意に計算でき、生物進化における遺伝子誕生の過程で上昇することを発見した。次に生物進化と癌のクローン進化の現象としての類似性から、多段階発がん過程においても上昇するか検討を行った。まず、ヒト24がん種に発現するがん特異的RNAに対してORFドミナンスを網羅的に計算したところ、14がん種で有意に高いORFドミナンスを示した。次に、胆管および膵臓のマウスオルガノイド発がんモデルを解析したところ、発がんとともにcoding RNA及びnoncoding RNAORFドミナンスが増加することを見出した。Gene Ontology解析の結果、ORFドミナンスが上昇した遺伝子セットは細胞増殖及び分裂期制御に関連し、ORFドミナンスが低下した遺伝子セットはDNA損傷やDNA修復に関連した。また、トランスラトーム解析により、発がん時にORFドミナンスが高まるとともにリボソーム結合RNAからの翻訳効率が高まることが実験的に示された。さらに、多段階発癌マウスモデル及び臨床データの解析から、がんの進展に伴いORFドミナンスにおけるcoding RNAnoncoding RNAの分布の境界が曖昧になることが示された。これは種の進化で見られるのと同様の現象だが、がんにおいては腫瘍内の増殖細胞数の減少とnoncoding RNAからのネオアンチジェンの出現確率の上昇を示唆すると考えられた。以上より、トランスクリプトームの翻訳変動はがん進化の主要な駆動力の一つであり、ORFドミナンスの変化がその動態を記述可能であることが示唆された。