第208回金曜会のお知らせです。通常と開催曜日が異なるのでご注意ください。11月13日月曜日18時よりインパーソンでの開催です。
第208回の演者は千葉県がんセンター研究所・進化腫瘍学研究室の末永雄介先生です。末永先生はOpen
reading frame dominance (ORFドミナンス)という概念を考案され、この指標が生物進化における遺伝子誕生の過程で上昇することを発見されました。またORFドミナンスの観点からがんの進化についての研究をお話しいただく予定です。今回インドネシア、テキサスで講演された後、NIHまで足を伸ばしていただけることになりました。
生物の進化や遺伝子誕生、がんの進化について思いを馳せるきっかけにぜひ足をお運びください!
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第208回 NIH金曜会
講演会:2023年11月13日(月)午後6時(EDT)よりin person形式
場所: Building 37 4階カンファレンスルーム (Room #4041/4107)
演者:末永雄介先生(千葉県がんセンター)
演題:がん進化におけるORFドミナンスの変動と遺伝子誕生
懇親会:午後8時ごろより
@Bacchus of Lebanon (7945 Norfolk
Ave)
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(講演要旨)
がんはその発症と進展において正常細胞には存在しないRNA isoformを多数発現する。しかし、こうしたトランスクリプトームの変化がどのようにプロテオームに影響を与え、がんの発症及び進展に寄与するかは不明な点が多い。我々はRNAの翻訳効率と相関する簡便な指標を探索する過程で、Open reading frame dominance(ORFドミナンス)という概念を最近考案して報告した。この指標はnoncoding RNAを含む任意の遺伝子のRNA配列から一意に計算でき、生物進化における遺伝子誕生の過程で上昇することを発見した。次に生物進化と癌のクローン進化の現象としての類似性から、多段階発がん過程においても上昇するか検討を行った。まず、ヒト24がん種に発現するがん特異的RNAに対してORFドミナンスを網羅的に計算したところ、14がん種で有意に高いORFドミナンスを示した。次に、胆管および膵臓のマウスオルガノイド発がんモデルを解析したところ、発がんとともにcoding RNA及びnoncoding RNAのORFドミナンスが増加することを見出した。Gene Ontology解析の結果、ORFドミナンスが上昇した遺伝子セットは細胞増殖及び分裂期制御に関連し、ORFドミナンスが低下した遺伝子セットはDNA損傷やDNA修復に関連した。また、トランスラトーム解析により、発がん時にORFドミナンスが高まるとともにリボソーム結合RNAからの翻訳効率が高まることが実験的に示された。さらに、多段階発癌マウスモデル及び臨床データの解析から、がんの進展に伴いORFドミナンスにおけるcoding RNAとnoncoding RNAの分布の境界が曖昧になることが示された。これは種の進化で見られるのと同様の現象だが、がんにおいては腫瘍内の増殖細胞数の減少とnoncoding RNAからのネオアンチジェンの出現確率の上昇を示唆すると考えられた。以上より、トランスクリプトームの翻訳変動はがん進化の主要な駆動力の一つであり、ORFドミナンスの変化がその動態を記述可能であることが示唆された。
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