矢野先生はNIDAでポスドク後、2020年よりボストンのNortheastern大学で助教として研究室を運営しておられます。
NIDAでは分子生物・薬理学的アプローチにより種々の受容体の観点から薬物依存を含めた精神疾患の研究に従事されました。
この度の講演では大麻の主成分として知られるカンナビノイドの合成版である、合成カンナビノイドについてお話をして頂きます。合成カンナビノイドは日本でも危険ドラッグに分類されており、若者を中心としたその乱用が社会問題になっています。矢野先生はアミノアルキルインドール系合成カンナビノイドが大麻に比べより強い効果を示す事、またその作用機序の一端を解明しました。
また、セミナー後半ではNIHポスドクからアメリカの大学での研究室運営までの道のりをお話し頂く予定です。
講演会はオンラインのみとなり、懇親会は行わない予定ですのでセミナー後に質疑応答時間を設ける予定です。
なお、今回は水曜日の18時からとなっておりますのでご注意ください。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。
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第189回金曜会(2022年8月31日(水))
セミナー:午後6時[EST]オンラインにて
演者:矢野秀明先生 (Northeastern University)
演題:「合成カンナビノイドにより喚起される超作動性の分子メカニズム」
懇親会:無し、セミナー中に質疑応答時間あり
ご登録いただいた方にのみWebExのリンクを送信します。
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(講演 要旨)
COVID-19パンデミック下において⽶国内外で薬物乱⽤・依存が顕著に増加しています。薬物乱⽤の⽬的はレクリエーション、現実逃避など様々ですが、根幹にある欲求は多幸感取得です。残念ながら医療⽤、⾮合法両者の向精神薬で薬物毒性が存在し、投薬量制御の改善とは別にその薬理メカニズムの解明が急務です。
昨今のオピオイド系鎮痛剤の乱⽤の陰に隠れていますが、2010年代にピークを迎え現在に⾄るまで合成カンナビノイドは突然死を含めた救急外来数や薬物検挙数の圧倒的多さで若者を中⼼に社会問題になっています。⼤⿇合法化の波による誤った認識のもと違法合成カンナビノイドの使⽤者は急増加し、その諸症状は明らかに⼤⿇による⾼揚感とは⼀線を画すと報告されています。
今回は⽇本においても危険ドラッグの⼀翼をなすアミノアルキルインドール系合成カンナビノイドの薬理研究の発表をさせていただきます。化合物内にある僅か⼀つのメチル基差異により、最⼤効果に多くの差が⽣じG蛋⽩活性の超作動性(superagonism)を喚起する事を発⾒、分⼦レベルからネズミの脳内までその効⼒の差を実証しました。よって違法合成カンナビノイドの最⼤効果とその毒性のメカニズムの⼀部解明が出来ました。
講演後半では、NIDA(National Institute on Drug Abuse)でのポスドクから⽶国の薬科⼤学で研究室を持つまでの流れに関する経験談をさせていただき、job huntやfaculty lifeに興味のある⽅からの質疑に答えようと思います。